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工芸レポート
職人の技術が詰まった、高品質のたわし
自然豊かな和歌山県紀の川市にある北山正積商店では、約100年前に日本で生まれた伝統ある高品質なシュロたわしを、この道50年の職人が丹生こめて手づくりしています。

職人の北山正積さん
原料は無農薬の棕櫚(シュロ)やヤシ(パーム)、サイザルなど用途にあわせて使い分け、大きさ、繊維の密度、そして形の美しさにもこだわることで最高品質のたわしがつくられます。

工房近くには一級河川の貴志川が流れる

加工される前の棕櫚
たわしづくりの基本となる「棒巻き」という工程では、繊維を均等に高密度で詰め、棒状に巻き込む力加減など、職人の手先の感覚だけがたよりに。この基本となる工程にこそ、機械には真似できない、職人の技術が詰まっています。


「棒巻き」の様子
使いやすさを追求して、細部にまで工夫を
また、芯には加工が難しいステンレスをあえて使用。水回りで活躍するたわしだからこそ、錆びに強くて変形しにくい、清潔さと使いやすさの両立が可能に。さらに、従来のパームたわしにある左右の帯紐を無くすことで4面が使えるように。手にする人の生活を意識した、気配りのある工夫がぎゅっと詰め込まれているのです。


現在は、職人の北山正積さんの元で、長女のひとみさんが二代目として技術を学びながら二人三脚でたわしを製作。家族みんなで新商品開発の企画をしながら、どこにもないたわしをつくっています。

長女のひとみさん

また長年、パームたわしをつくってきた北山さんは、スリランカのたわし職人に技術を伝える取り組みも行っています。スリランカの職人が手作業でつくった高品質なたわしを日本で販売することで、日本だけでなくスリランカのたわし文化を守り、継承されていく一助になればと考えています。
取材:新 拓也 撮影:森下 大喜 文:大西 健斗